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エンデューロ(100枚)
MM55-59/MM60-64,MM65-69/MM70over(91枚)
MM35-39,MM40-44/MM45-49,MM50-54(117枚)
MJ/MU15,MU17(179枚)
WE(156枚)
ME(272枚)
シクロクロスの朝は早い。まだ空が白む前に家を出て、高速道路を走りながらようやく頭と身体がレースモードに切り替わっていくのが常である。
しかし、地元で開催される「宇都宮シクロクロス」は少し事情が違う。会場までの距離感も勝手知ったるものであり、朝7時に目覚ましをセットしても「まだ余裕がある」と思えてしまう稀有なレースである。
とはいえ、この日も目覚ましが鳴る前に自然と目が覚めた。窓の外の冷えた空気と、会場で自転車仲間の準備が静かに進んでいる光景を想像すると、布団の中でじっとしていることができないのだ。
「今日はどのレースで、どの瞬間を撮ろうか」
そんなことを考えながらカメラバッグを確認し、バッテリーとメモリーカードの残量をチェックする。地元開催ならではの余裕と、秋のジャパンカップが再びやってくるような、冬のお祭りが始まる高揚感とが同居する、不思議な朝である。
仮装エンデューロが開幕を告げる
宇都宮シクロクロスの1日は、例年通りエンデューロレースから始まる。JCFライセンスを持っていなくても出走できるこのレースは、「シクロクロスを走ってみたい」「会場の雰囲気を味わいたい」というライダーにとって格好の入口であり、2日間のイベント全体の幕開けとして象徴的な存在である。
このエンデューロの特徴は、1~3位の表彰に加えて「仮装賞」が設けられていることにある。ただし、仮装なら何でもよいというわけではなく、シクロクロスレースである以上、安全面を考慮したルールがきちんと存在している。その制約があるからこそ、ルールの範囲内でどこまで攻められるかという「こだわりの仮装」が生まれ、単なるコスプレではない“走れる仮装”が集まるのである。
観客兼カメラマンとしては、この時間帯はなかなか忙しい。2日間開催の一発目がエンデューロであるため、コースレイアウトを把握しながら撮影ポイントを探しつつ、そこを通過する仮装ライダーたちを見逃さないようにシャッターを切らなければならない。レースとしての動きも押さえたいし、仮装のディテールも記録したい。その両立は想像以上に難しく、ファインダーの中で「どこまで欲張るか」を毎周回ごとに試されている感覚である。
今年、特に目を引いたのは3人組のピクミンであった。赤・青・黄が代わる代わる走る姿は、真面目にペダルを回しているのに、どうしても笑ってしまう絶妙なバランスだったが、黄色ピクミンが移動中で撮影が間に合わず、逃してしまった。
こうした「撮れそうで撮れなかったカット」が心に引っかかるのも、シクロクロス撮影の面白さであり、次回への課題でもある。

マスターカテゴリーと、静かに熱い1日目の空気
エンデューロが終わると、会場の空気は徐々に「レースモード」へと切り替わっていく。マスターカテゴリーのレースが始まり、その後にはUCIレースのジュニア、そして男子エリートへと続いていく流れである。
松伏シクロクロスが、濃密な1日完結型のイベントだとすれば、宇都宮シクロクロスは2日間を通してじっくりと味わう二部構成のイベントだ。大会側も1日目をマスター中心、2日目をエリート中心と明確に性格づけしており、その構成の違いが会場全体の雰囲気にもはっきり現れていた。
私感ではあるが、1日目の会場には「落ち着いてレースを楽しむ観客」が多かったように思う。コース脇で静かに声援を送りつつ、知り合いの選手の出走時には少しだけ声のトーンが上がる。レースの合間には、出店でコーヒーや軽食を買い、観戦仲間と淡々と情報交換をする。
全体として、いい意味で肩の力が抜けた、“地元のシクロクロスの日常”のような空気感が流れていた。
一方で、多くの観客は出走者の家族やチームメイト、仕事仲間である。だからこそ、レースそのものは非常に真剣である。マスターカテゴリーでは、長年レースを続けてきたライダーたちの走りが多く、そのライン取りやペース配分には経験値の厚みがにじみ出ている。
ファインダー越しに見ていると、派手なアタックや転倒がなくとも、コーナーごと、キャンバーの斜面ごとに「なるほど」とうなずきたくなるシーンが多い。観客の声援は穏やかだが、レースの密度は濃い。そのギャップもまた、1日目ならではの魅力である。

2日目だけを見れば「お祭り感のある賑やかな大会」という印象になるだろうし、1日目だけを見れば「落ち着いた大人のためのシクロクロスイベント」という印象になるかもしれない。
宇都宮シクロクロスという大会の本当の顔は、その両日を通して初めて立体的に見えてくる。都合によりどちらか1日しか来られない方も多いと思うが、可能であれば2日間通しで参加してほしいと感じる所以である。

フードと出店、2日間通しての楽しみ方
宇都宮シクロクロスの魅力は、レースだけにとどまらない。出店が多く、しかもフードのレベルが毎年高いのである。温かい飲み物、がっつり食べられる煮物、甘い焼き芋、さらにお土産としてキウイやネギまで揃っている。
シクロクロスは冬の屋外イベントであり、観戦時間も長い。寒さと立ちっぱなしで、気づかないうちに体力が消耗していく。その意味で、身体を温めてくれる食べ物や飲み物の存在は大きい。レース合間の15分ほどでサッと食事を済ませ、またカメラを肩にかけてコースへ戻る――そんなリズムが自然とできあがる。
レース観戦がメインでありながら、グルメ目当てに会場へ足を運んでみても十分に楽しめる環境が整っているのは、宇都宮シクロクロスの強みであると感じる。レースとフードの両方を満喫しようとすると、どうしても1日だけでは足りない。やはりこの大会は、2日間通して参加することで真価を発揮するイベントであると言える。
夕暮れのエリートレースと、光との格闘
1日目は、スケジュールの関係で女子エリートと男子エリートのスタート/フィニッシュ時刻が2日目よりも1時間遅く設定されていた。特に男子エリートは、太陽が沈む一歩手前の時間帯がフィニッシュとなり、撮影としても難しいコンディションとなった。
冬の夕方は光の変化が早い。数周のうちに、順光気味だったポイントが、その次の周回では薄暗い日陰になることもあった。順光でジャージのカラーや表情をしっかり見せるか、逆光でシルエットと土煙を強調してドラマチックに撮るか、周回ごとに判断を迫られる。
この日は「順光で顔とジャージをきちんと写したい」という狙いがあったが、太陽がどんどん傾いていく中で、その条件を満たす立ち位置を見つけるのに苦労した。コーナーの立ち上がり、キャンバーの切り返し、ホームストレート手前など、何カ所かを試しながらシャッターを切ったものの、「ここだ」と言い切れるポイントには最後までたどり着けなかった。しかし、こうした試行錯誤こそが、翌日の撮影につながっていくはず…。
レースとしては、薄暗くなり始めたコースを、選手たちが最後まで集中力を切らさずに走る姿が印象的であった。路面状況を読む力、ライン取りの精度、最後まで踏み続ける脚力。マスターカテゴリーとはまた違った「エリートならではの密度の高い走り」が、夕暮れのコースを一層際立たせていた
