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JPT(227枚)
6時に起床すると、宇都宮の空は霧雨に煙っていた。
この日は秋の紅葉を楽しみたくて、わたらせ渓谷沿いの道を通るルートを選んだ。朝の時間帯は交通も少なく、結果的に到着時刻の差は30分ほど。わずかな時間を、季節の移ろいに浸るドライブに変えた。
群馬サイクルスポーツセンターに着くと、気温はわずか9度。宇都宮も冷えていたが、山あいの空気はさらに鋭く感じられる。
フリースジャケットを持参して正解だった。霧雨がしとしとと降り続き、ポンチョとハット帽で防寒と防水を兼ねる。路面は滑りやすく、登山靴を選んだのも功を奏した。
近ごろ熊の目撃情報も耳にするが、この日はドリフト練習が行われ、エンジン音とタイヤのスキール音、焦げたゴムの匂いが立ちこめている。そんな喧騒の中では、さすがに熊も姿を見せまい。
JBCFロードシリーズもいよいよ終盤。群馬CSCでのこの大会が、JPTカテゴリーの最終戦となる。
スタート前には運営から、今季で引退を迎える選手や来季移籍を予定する選手の発表があり、会場全体が静かな緊張に包まれていた。
選手たちの表情には「このメンバーで走る最後のレース」という意識がにじむ。各チームとも自然と気持ちが引き締まっているように見えた。

午前11時33分、JPTカテゴリーのレースがスタート。距離は150km(6km×25周)。
序盤からAstemo宇都宮ブリッツェンとヴィクトワール広島が主導権を握り、逃げを許さないコントロールを続ける。

特にフォン・チュンカイ選手と武山晃輔選手が中心となり、逃げ集団の構成を慎重に見極めていた印象だ。4周目までは決定的な動きが生まれず、緊迫した展開が続く。
やがて逃げが形成されると、集団は一時的に落ち着きを取り戻した。

ゴールスプリントを制したのは、Astemo宇都宮ブリッツェンの岡篤志選手。続いてシマノレーシングの山田拓海選手が2位、群馬グリフィンレーシングチームの金子宗平選手は3位でフィニッシュ。
北関東ダービーを決めるスプリント勝負は、会場からは大きな歓声が上がった。最終戦らしい集中力と気迫を感じさせる一戦だった。

レースが落ち着いたタイミングで、私は撮影ポイントを求めてコースを一周。
伐採が進んだ南側では、視界が開け、これまでとは違う構図が見つかった。林のトンネルへ吸い込まれるように走る選手たち。その背中を霧雨が包む。

曇天の林内では光量が足りず、シャッタースピードを落としてもISOは6000近く。レンズに水滴が付かないよう、選手がやってくる直前でポンチョからカメラを出し、ファインダーが曇らないよう、息を止めてシャッターを切る時間が続いた。

この群馬CSCで私のロードシーズンが幕を閉じる。次回からいよいよシクロクロスの季節だ。泥と芝、冬の光を舞台に、新しい表現のフィールドが待っている。今回の霧雨の撮影経験もきっと活きるだろう。
霧雨に包まれたコース沿いでは、観客が一斉に熊よけの鈴を鳴らしながら選手を応援していた。
高く澄んだ音色が森に反響し、秋の冷たい空気と混ざり合う。群馬CSC特有の自然の静けさと、鈴の柔らかな響きが見事に調和していて、思わず微笑んでしまうほど可愛らしい光景だった。
よく考えてみれば、この熊よけ鈴は応援グッズとして理にかなっている。音の立ち上がりが穏やかで、耳に心地よい高音が程よく遠くまで届く。しかもサイズが小さく、首やリュックにぶら下げても邪魔にならない。
今後のレース観戦でもおすすめしたいアイテムだ。
