<Amazon Photos>
掲載写真はすべて撮影者である私(Toru HASHIMOTO)が撮影したものです。
写真に写る選手の皆様の肖像権に配慮し、敬意をもって掲載しています。
掲載写真についてご不都合やご要望がありましたら、お手数ですがご連絡ください。
5月31日、TOJ東京ステージ。
前回の記事では、本戦前に行われたJICF学連クリテリウムの撮影について書いた。朝から大井埠頭に入り、駐車場を探し、学生レースの速い集団を追いかける。あれだけでも十分に濃い時間だった。
ただ、この日の本番はまだその先にある。
JICF学連クリテリウムが終わると、会場の空気は少しずつTOJ本戦へ切り替わっていく。学生レースの近さと緊張感から、国際ロードレースの最終ステージらしい華やかさへ。現地にいると、その変化が分かる。
今回は、TOJ東京ステージ本戦を、レース結果の記録というより撮影者の視点で残しておきたい。どこに立ち、何を狙い、どのくらいのシャッタースピードで切ったのか。特に、この日の大井埠頭では、1/15秒前後まで落とした流し撮りで、東京ステージらしい高速感を狙っていた。
学連クリテの後、TOJ本戦の空気に変わる
JICF学連クリテリウムの撮影を終えたあと、もう一度スタート地点周辺へ戻った。
TOJ公式の案内では、東京ステージは11:00スタート。パレード3.8kmと104.0kmの本戦で構成される、大井埠頭周辺を舞台にした最終ステージだ。
朝の会場とは、少し空気が違っていた。
JICFの時間帯は、学生レースらしい近さがあった。選手との距離も近く、集団の中から目当ての選手を探す難しさもある。一方で、TOJ本戦のパレードランが近づくと、大会車両、関係車両、観客の視線、会場全体の動きが一気に大きくなる。
同じ大井埠頭に立っているのに、始まるレースが変わるだけで、見えるものまで変わる。
パレードランはストレートで待つ
パレードランを撮るために選んだのは、大井埠頭周辺の公園前にあるストレート区間。Uターンポイント付近で待ち構える形にした。
まず大会関係車両が通り、その後に選手たちが続いていく。
レース本番の鋭さとは少し違い、パレードランには観客に向けたお披露目のような時間がある。選手の表情、チームごとの隊列、集団全体のまとまり。そういうものを撮るには、かなり良いタイミングだった。

もちろん、ここで気を抜くと普通に撮り逃す。
パレードランだからゆっくり撮れる、というほど甘くはない。目の前を通過する時間は短い。ゲストが来て、選手が来て、車列が来る。そのたびに構図を少しずつ合わせる必要がある。
大井埠頭のストレートで速度感を探る
パレードランが終わると、いよいよTOJ東京ステージ本戦としてのレースが始まる。
自分はそのまま、大井埠頭周辺の公園手前にある、大きな道路がT字路のように見える場所に残った。ここは反対車線側も見やすく、往路と復路の選手たちが高速で走る様子を撮影できる。
最初の数周は、いきなり勝負どころを追うというより、まず集団の通過位置、速度、背景の流れ方を確認する時間だった。
この段階で考えていたのは、東京ステージらしいスピード感をどう写真にするかだった。
大井埠頭の平坦なストレートは、とにかく速い。高速シャッターで止めれば、選手の姿はきれいに写る。けれど、それだけだと、コース全体を駆け抜けていく感覚が少し薄くなる。
そこで、シャッタースピードをかなり遅めにした。

1/15秒で東京ステージを流す
1/15秒の流し撮りは、歩留まりがよい撮り方ではない。
選手を完全に止めるのは難しい。集団の全員をきれいに写すのも、ほぼ無理だ。少しでも振り遅れれば全体が流れすぎるし、選手の動きとカメラの振りが合わなければ、ただのブレ写真になる。
それでも、この日は背景をしっかり流したかった。
東京ステージは、山岳やアップダウンで見せるレースではなく、平坦な都市型の高速周回コースだ。集団が横方向に抜けていく速度、隊列の密度、選手同士の距離感。そのあたりを写真に入れようとすると、ただ止めるより、少し無理をしたシャッタースピードのほうが面白い。
狙いは、単独選手ではなく集団だった。
複数の選手がまとまって走る中で、そのうち何人かに芯が残り、背景が横に流れてくれる。そうなると、ロードレースらしい密度と、大井埠頭を駆け抜ける速度感が一緒に出る。
もちろん失敗も多い。
でも、たまに決まる。
その一枚があるから、低速シャッターはやめにくい。

撮影場所を変えると、写真も変わる
序盤をストレートで撮ったあと、少し撮影場所を変えることにした。
コンビニの前を横切り、線路の手前へ。そこから線路沿いのコーナー出口付近に移動した。
同じ東京ステージでも、ストレートとコーナー出口では写真の印象がまったく違う。
ストレートでは、横方向に流れる集団を撮る感覚になる。背景を流し、スピード感を出す。一方、コーナー出口では、選手が曲がり終えて再び加速していく瞬間を狙う。体の傾き、視線、後ろから続く集団の圧力が見えやすい。
場所を変えるだけで、同じ選手、同じレースでも、写真の意味が変わる。
これは現地撮影の面白いところだと思う。

YouTube配信を耳で聞きながら撮る
レース展開としては、5名の逃げが決まった。
メイン集団との差は、2分程度まで開いたようだった。ただ、このあたりは自分がコース全体を目で見て把握したわけではない。現地ではYouTubeの公式配信を聞きながら撮影していて、レース全体の状況は耳から補っていた。
東京ステージのような高速周回では、現地で見えるものはかなり限られる。
配信では、「逃げがどうなった」「集団との差がどうなった」「落車があった」といった情報が流れてくる。一方で、目の前を通過する選手は本当に一瞬だ。
耳ではレース全体を聞いている。
目では、目の前の一瞬を追っている。
この二つが、微妙にズレる。
配信で聞いた状況を頭の中で処理している間に、目の前ではもう次の選手が通過していく。理解するより先にシャッターを切らないと間に合わない。現地観戦は楽しいが、撮影しながらだとかなり忙しい。
逃げ、集団、遅れた選手を切り替えて追う
中盤には、逃げていた5名のうち3名が落車したという情報も入ってきた。
この件も、現地で配信を聞きながら把握したものなので、ここではレースレポートのように断定して語るより、自分が撮影中に受け取った情報として書いておきたい。
目の前の見え方としては、「1人来た、また1人来た」という速さだった。
逃げが完全に固まって、そのまま強く逃げ切るというより、状況が落ち着ききらないまま進んでいくレースに見えた。逃げができ、差が開き、それでも中盤で崩れ、集団は終盤へ向けてスピードを増していく。
メイン集団の中では、前に出たい選手がいても、なかなか先頭付近へ上がれないようにも見えた。高速で進む集団の中で、位置取りが難しくなっていたのかもしれない。
撮影者としても、ただ先頭だけを待っていればよいレースではなかった。
逃げの残り、メイン集団、そこから遅れた選手が、それぞれ違うタイミングで目の前を通過する。そのたびに構図を変え、AFの置き方を変え、シャッターの切り方を変える。
東京ステージは平坦な高速ステージだが、現地で撮っている側からすると、かなり神経を使うレースだった。
撮る側から見たTOJ東京ステージ
レース結果だけを見ると、TOJ東京ステージは最終日の高速スプリントステージとして語られることが多い。
それはもちろん正しい。
ただ、現地でカメラを構えていると、見えてくるものは少し違う。
どこで待つか。
どの方向から選手を迎えるか。
どのシャッタースピードで、どれだけ背景を流すか。
配信で聞こえてくるレース全体の状況と、目の前を一瞬で通過していく選手。その間にあるズレを、どう処理しながら撮るか。
今回の東京ステージは、その判断の連続だった。
1/15秒の流し撮りは、正直なところ歩留まりが悪い。それでも、大井埠頭のストレートを高速で抜けていく集団を撮るには、あのくらい攻めた設定にしたくなる。
撮り逃しもある。
ブレすぎた写真もある。
でも、背景が流れて、選手の動きに芯が残った一枚を見ると、ああ、これが東京ステージだと思える。
今年のTOJ東京ステージは、見るだけでなく、撮る側としてもかなり忙しいレースだった。耳で展開を追い、目で一瞬を追い、指でシャッターを切る。その忙しさも含めて、大井埠頭でしか味わえない一日だった。
